小説仮面ライダーディケイドの感想

鏡弘亜樹さんの、特撮テレビドラマ『仮面ライダーディケイド』のノベライズ版です。テレビとは全く違った物語になっており、それも楽しみの一つです。

副題は「門矢士の世界~レンズの中の箱庭~」となっており、主人公である門矢士を中心に進んでいきます。テレビ版では、士は記憶喪失の青年として描かれ、彼の素性については語られてきませんでした。それに対して小説版では、どこにでもいる無気力な青年になっています。

士は偶然から、数々の並行世界をめぐり、その世界ごとに起こっている様々な事件を解決していく「通りすがりの仮面ライダー」、仮面ライダーディケイドに変身する力を手にします。それは、誰もが抱く、無敵のヒーローという夢を実際に手にしたということで、士も現実世界とは別の出来事としか思っていませんでした。ところが、現実とはかけ離れたはずのその世界の登場人物である、光夏海と海東大樹が、士の現実に介入してきたことで、状況は変わっていきます。

そして描写はかなりハードさを増していきます。士の世界においては、夏海はすでに死んでいた人物であったり、海東は一家を殺害された人物であったり、という状況で、皆が現実に絶望していたのです。

その事実を知ったうえで、士は3つの世界の仮面ライダーと向かい合い、現実を見つめ、人間として成長していくことになります。その過程は見ていて共感するものがあります。

少し残念なのは、テレビ版の登場人物である小野寺ユウスケやキバーラが登場しないことですが、「かっこ悪いヒーロー」に共感できる、佳作だと思っています。